2011年1月29日土曜日

“現在最強”!?、ほぼ全部入り無線LANルータ「Aterm WR8700N」の実力検証(後編)

 NECアクセステクニカのハイエンド無線LANルータ「AtermWR8700N」(以下、WR8700N)は、もちろんブロードバンドルータとしての機能も豊富だ。主な機能の確認と導入設定までの流れは、前編を参照願うとして、後編は導入後にどう便利に、快適に使えるかに迫ろう。

【拡大画像や他の画像、AtermWR8700Nの通信速度テストを含む記事】

 WR8700Nのルータ機能においては、DHCPでLAN内の機器へIPアドレスを自動割り当てしつつ、MACアドレスで特定の機器のIPアドレスを固定できる機能も便利だ。こちらは、LAN内にサーバーを設置する場合などに利用するほか、「iPhoneをヘビーに利用するユーザー」にも使ってほしい。

  iPhone 3G/3GS/iPod touch(以下、iPhone。今後は、iPadも含むとも想定)には、無線LANを利用してPCとファイルを交換/やりとりできるアプリケーションも多い。ただ、その多くがiPhone側をFTPやDAVサーバーとする仕組みで実現するため、PCからiPhoneのIPアドレスを指
定して接続する方法となる。つまり、iPhoneのIPアドレスは固定の方が都合がよいわけだが、iPhone側にはIPアドレスを固定設定にする機能がない(iPhone OSバージョン3.1時点)。この点、本機なら無線LANに接続したiPhoneのIPアドレスをMACアドレスとひも付けることで半ば固定化できるので、PCからiPhoneへの接続設定をたびたび変更する──といった面倒が不要になる。

 ちなみに、IPアドレスを固定する機器と自動割り当てする機器の管理を一元化できるのもうれしい。PCの設定を逐次変更しなくても、IPアドレスの割り当てを本機のWeb設定ツールだけでコントロールできるのだ。

 ここで取り上げた機能は、一般的な家庭でPCやAV機器などから“単にインターネット接続”するだけでよいなら、おそらく使わなくてもよいものだ。

 しかし、無線LANはIEEE802.11n対応で、2.4G/5GHz帯の同時利用が可能、有線LANはギガビット対応となれば、本機を導入すれば確実にあと数年は買い換える必要はないだろう。そんな状況において、今後のさまざまなインターネット利用シーンや、今後発生するかもしれない自身のニーズにも対応できる“将来的な多機
能さ”を備えていることは、かなり重要なことである。

●セキュリティ対策にも応用できるイーサネットコンバータ

 続いて、テレビやBlu-rayレコーダーなどのネットワーク対応AV機器を所持するユーザー向けとなるイーサネットコンバータ「WL300NE- AG」の使い勝手も検証しよう。

 WL300NE-AGも、導入が手軽であることはもちろん、セキュリティ対策にも応用できる豊富な機能を持っている。Web設定ツールで接続するアクセスポイントの選択や、自身のIPアドレスなどが設定できるほか、無線クライアントモードを3種類から選択できる。

 無線クライアントモードは「拡張モード」「標準モード」「クローンモード」があり、拡張モードは、WL300NE-AGに接続した端末からIPv6ブリッジやPPPoEブリッジなども利用できる。つまり、無線接続ながらも親機(WR8700N)に直接有線LANで接続した場合とほぼ同じ機能が利用できる。

 一方、標準モードはWL300NE-AGの MACアドレスが親機に識別され、認証する仕組み。クローンモードは、WL300NE ドラゴニカ rmt
-AGを介して“最初に親機に接続した機器のMACアドレス”で親機に識別されるものだ。

 例えば標準モードを利用すると、親機におけるMACアドレスフィルタリング機能で無線接続を許可するクライアントは厳しく制限しつつ、WL300NE- AGに有線LANで接続した機器であれば無条件に接続を許可する──といった使い方ができる。将来的にAV機器を追加?買い換える場合にも困惑せずに済むだろうし、オフィスであればゲスト用や検証機器の接続専用に有線LAN接続を開放するといった応用も可能だろう。

● 家庭での利用に便利なエコモードと簡易ファイルサーバー

 WR8700Nは、極めて高機能なブロードバンドルータであると同時に、別の意味でAtermシリーズらしい家庭での利用も考慮した機能も備える。

 1つ目はエコモード。無線LANを無効にしたり、有線LANの最大通信速度を100Mbpsに落とすことで消費電力を最大54%、さらに未使用のLAN ポートへの電源供給を遮断することで最大59%に抑えることが可能だ。エコモードへの切り替えは本体のボタンで手動で行うほかに、スケジュール設定で時間帯別に移行/復帰を自動的に制御できる。例えば、深夜帯は無線 arad rmt
LANを停止して、子どもがゲーム機やノートPCからインターネットに接続することを禁止する──などの応用が考えられる。

 2つ目は背面のUSBポートを利用した簡易ファイルサーバー機能だ。これは、USBマスストレージクラスのUSBメモリやUSB接続型の外付けHDD を、ネットワーク型ファイルサーバーあるいはDLNAサーバーとして利用できるようにするもの。外付けHDDなどの手持ちの機器を応用するだけなので、かなりリーズナブルにNAS環境を構築できるのがポイントである。

 もっとも、本格的なNASと比べると機能は劣る。ファイル転送速度は有線LANで接続したPCにおいてリード最大約8Mバイト/秒程度とかなり遅め(PCとUSB 2.0接続時でリード19Mバイトが出るUSBメモリを使用した場合)で、NTFSはサポートされない。デジカメ写真を家族で共有する──程度ならよいが、動画データも共有するとなるとパフォーマンスはやや足りない。また、インターネット側(外出先など)からの利用が(現時点では)考慮されていない点も少々残念だ。

 この機能は大容量のUSBメモリを接続するなど、家庭内でのライトなファイルの共有に利用するならそこそこ便利そうだが、それならば
USBポートは前面にもあってほしいし、取り外しもWeb設定ツール上で「アンマウント」作業が必要なので、一般家庭内ユーザーが使うとなるとやや面倒。ともあれ、こちらはソフトウェアベース(ファームウェアのアップデートなど)で機能追加?向上もありえるだろうから、今後、さらなる機能の刷新や工夫に期待したい。

●2×2 MIMO構成に変更されたアンテナ──気になる通信速度は

 WR8700Nのアンテナは、送受信にそれぞれ2つずつのアンテナを使う2×2 MIMO構成である。これは、下位モデル WR8500Nの3×3 MIMO構成よりカタログスペック上では劣るととらえられる。ただ、本機がサポートする最大300MbpsのIEEE802.11nは、同時に送受信するストリーム数は送受信それぞれ2つ。ちなみに(2010年5月現在の)3×3 MIMO対応機器であっても、そのうちの1対は“より電波をとらえやすくするため”などといったの補助的な役割となるため、理論上の最大送受信速度は同じである。

 なお、ほぼ同じ住居環境で計測した同社のテスト結果によると、近距離での通信速度はWR8500Nにわずかに若干劣るが、距離が離れ、障害物が増えた環
境においては大幅に上回るという。

 では通信速度の実パフォーマンスを検証しよう。無線設定は2.4GHz帯、 5GHz帯ともにIEEE802.11nのデュアルチャネル接続とし、WL300NE-AG+ノートPCを有線LAN接続した“クライアントA” (WR8700N?WL300NE-AG間が無線接続、WL300NE-AG?ノートPC間がギガビット有線LAN接続)と、ノートPCに内蔵する Intel WiFi Link 5100AGNモジュールを利用する“クライアントB”(WR8700N?ノートPC間が無線接続)を用意。WR8700Nとクライアントの距離を、同室内で2メートル、壁1枚隔てた別の部屋(直線距離で8メートル)、同じく壁2枚を隔てたさらに別の部屋(同約15メートル)の3パターンで行った。合わせて、同条件化でクライアントB(Intel WiFi Link 5100AGN)におけるIEEE802.11a/g環境の測定値も併記するので、参考データとして見てほしい。

 同室内の近距離通信においては、クライアントAが ルイヴィトン バッグ
5GHz帯で100Mbps以上、2.4GHz帯で94.6Mbps、クライアントBも5GHz帯/2.4GHz帯ともに 74Mbps台となり、なかなか満足のいくパフォーマンスが得られた。クライアント別の速度差は、無線チップベンダーごとの差と考えられる。 IEEE802.11nは正式制定されたとはいえ、無線チップベンダーごとに独自の高速化機能が実装されていたりする。このため、同じ無線LANチップ(Atheros製)同士のWR8700NとWL300NE-AGの接続の方が高いパフォーマンスを発揮するようだ。

 ともあれ、 IEEE802.11a/gより3?5倍も高速で、100Mbps近く出るならば「データコピー時など、速さを求めるときだけ有線LAN接続する」ことも、もはやほぼ不要になる。

 親機から離れた別の部屋での利用においても傾向はだいたい同じだ。今回の測定環境が木造家屋であることは鉄筋コンクリート建築よりいい方向に影響するのは確かだが、本来回折しにくく、障害物に弱いとされる高周波数な5GHz帯の方が良好な結果だった。今回行ったテストにおいては、クライアントAが 75Mbps超、クライアントBも aika rmt
50Mbpsを超えた。IEEE802.11a/gとの差は、こちらは大きな落ち込みがまだ少ないためかやや縮まったが、それでも2倍以上は高速だ。

 ちなみに、この環境でWL300NE-AGとバッファロー「LinkTheater LT-H90」(レビュー:DTCP-IP対応でAV機器の仲間入り、バッファロー「LT-H90」を試す)を用い、レコーダーでTS録画(約 25Mbps)したBSデジタルのハイビジョン番組をDLNA経由で再生するテストにおいて、2.4G/5GHz帯ともまったく問題なく行えることも確認した。

 さらに、もう1枚壁を隔てた部屋に移動しても、クライアントAは2.4G/5GHz帯ともに20Mbps以上をキープした。一方、クライアントBは 2.4GHz帯が一気に4Mbpsほどまで落ち込んだが、これは別の無線LANアクセスポイントで設定してあった IEEE802.11n(2.4GHz)との干渉により、接続が自動でIEEE802.11gに切り替わってしまったことが原因と思われる。こちらは、マンションなどの集合住宅で利用する場合──に置き換えてもらっ
てもよい。一方、干渉要因がほぼない5MHz帯においては、17Mbps超をキープした。こういったところに、やはり5GHz帯で運用するメリットを見いだせる。

 5GHz帯は周波数が高いため、2.4GHz帯と比べると障害物に弱いとされる。ただ、IEEE802.11nのMIMOは反射波も活用するので、一概に階上の部屋越しなど一般家庭の利用においては使い勝手が大きく落ちない。また、2.4GHz帯でのIEEE802.11nで倍速モードを利用するとなると、近隣の別IEEE802.11nアクセスポイントからの干渉も避けられない。もともと2.4GHz帯は、完全に干渉を排除できるチャネル数は4つ分しかないのに、倍速モードはそのうちの2つが必要だからだ。これらの点は今回の検証結果にも反映されたといえ、WR8700Nを導入したなら「もう、PCでの高速無線LAN環境は5GHz帯で運用する」と決めてしまってよいと思える。

●例えると「オールマイティ」──スペックを考慮すると、価格も手ごろ感あり

 WR8700Nの特徴をひとことで言い表すなら、「オールマイティ」だろうか。多機能で、高機能でありながら導入は極めて容易であり
、セットモデルであればイーサネットコンバータも無線LANの接続設定済みである。2.4G/5GHzの同時利用が可能なので、クライアント側の用途やロケーションに合わせて周波数帯の使い分けもできる。もちろん初期設定のまま利用しても無線LANのセキュリティはほどほど確保されており、家庭用ゲーム機での利用も容易な自動接続設定が利用できる。それでいてルーター、無線LAN機能ともに“玄人好み”でもある詳細な設定が可能であり、すでに触れた通り、さまざまな利用シーンに対応が可能だ。

 つまり、今購入する無線LANルータは「今後数年に渡って使うもの」。となると、機能にスキがないことは“将来を見据えた場合”に重要なポイントだ。

 あえて本機に欠けている機能を指摘するとすれば、VPNの着信機能がある。この機能がないなら選ばないという人も存在するとも思うので、ハイエンド製品ならばやはり装備してほしかった。また、USBストレージ機能もインターネット側からのアクセスに対応してくれると利用シーンはさらに拡大すると思う。家庭からインターネットへのゲートウェイだけではなく「家庭とインターネットを結ぶハブ」としての機能の充実を、今後の製品には特に望みたい。

 ともあれ、AtermWR8700Nが現状で極めて魅力的な無線LANルータであることに間
違いはない。そのスペックを考慮すると、価格も十分手ごろ感があることも含め、IEEE802.11n対応ルータの購入/買い換えを検討しているなら候補の筆頭に上げてよい製品だろう。【坪山博貴】

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引用元:RMT(リアルマネートレード)専門サイト『RMTワンファースト』

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